働くという行為は、社会において自分の価値を見出す一つの手段です。
しかし、B型作業所での仕事は、多くの場合機械やAIに代替可能な単純作業に偏っているのが現状です。封筒詰めや製品のパッケージ作業などは、短時間で大量に処理できる機械の存在があるのに、人間がわざわざこれらの作業を行う意義について疑問を持つこともあるでしょう。
一方、A型事業所も盤石ではありません。
このようなニュースに代表されるように、報酬改定などを期に閉鎖に追い込まれる事業所も増えています。
株式会社8ユニット代表取締役 就労継続支援B型事業所「未来図校静岡キャンパス」を運営。障害に特化した400名以上とのカウンセリング歴により、5年後の社会的自立を目指す支援を実施。
静岡の映像制作会社 合同会社RP代表。発達障害・精神障害のロールモデルを探す「今こそ動画だ!」を運営。Adobe認定プロフェッショナル(Premiere Pro) 発達障害(ADHD,ASD)当事者。
実際、B型事業所で行われている作業の多くは、既に機械に取って代わられ得るものがほとんどです。
例えば、利用者が1秒に1枚の請求書を封筒に入れる作業がある一方で、1秒で100枚を処理する機械が存在したとすると、
作業を行う利用者側の「社会に役立っている」という誇りが損なわれてしまうのではないでしょうか。
B型事業所の利用者の中には、機械やAIに取って代わられることを意識しながらも毎日作業を続ける人々がいます。しかし、その作業の多くはAIやファクトリーオートメーション(FA)技術で代替可能であり、「手作業でなくても良いのではないか?」という疑問もあります。
こうした背景には、B型事業所を利用する人々の多くが、より高単価で難しい作業ができない状況があり、必然的に簡単な作業に偏ってしまう現実があります。
そもそも産業が高度化したことにより、もともと多くの人手が必要であった労働集約型産業が減っていることが背景にあります。現代のトレンドは省力化であり、B型事業所の得意とする分野とは逆行している感が否めません。
B型事業所の仕事は、ときにに企業が必要のない作業を「わざわざ切り出して」作業として与えることがあります。
たとえば、企業の総務部が自らのプリンターで印刷して封入できるような仕事を外部に委託し、B型事業所に作業を発注するようなケースが考えられます。
しかし、こうした「本来必要でなかった仕事」を続けることは、上司の交代などで突然無くなるリスクがあるため、「働く喜び」が削がれることに繋がってしまわないでしょうか。
一般企業における障害者雇用もまた、同様の課題を抱えています。
障害者求人を出して採用した社員に対して、特定の仕事を用意するのではなく、それまで必要のなかった仕事を「新たに作って」与えるというケースが多いです。
その結果、仕事の意味や価値が曖昧になり、上司の方針次第で仕事が無くなってしまうリスクも存在します。
企業側としては、仕事を切り出して障害者雇用に回すことで業務の負担を軽減するという考えもありますが、これが本当に双方にとって良い形であるかは議論の余地があります。
作業を切り出して与えることの最大の問題は、切り出すことによって実際には工数が増えていることです。
本来やらなくて良い作業を障害者のためにわざわざやっているということは、無駄なことと福祉であることを天秤にかけているということです。省力化や働き方改革のトレンドが進むと、これを良しとしない上司に変わることも十分に考えられます。
企業と利用者の双方にとって良い形での働き方を実現するためには、企業側の取り組みがカギとなります。
例えば、障害者雇用を「意義あるもの」にするために、実際に必要とされる仕事を提供したり、採用された障害者に対して具体的な役割を与えたりすることが望ましいです。また、仕事の価値が曖昧な状況を避け、上司の交代によっても仕事がなくならないような体制を構築することが求められます。
「企業側の取り組み」と簡単に言いますが、具体的にはどのようにすべきか、まだまだわからないところがあるでしょう。利用者・事業所・企業ともに、B型事業所の出せる価値を見える化し、そのなかでより良い形を模索していくことが必要です。
B型事業所や障害者雇用の企業は、双方にとって良い形を見つけるための取り組みを進めていく必要があります。
企業が働く意味や意義を持たせることによって、利用者や社員のモチベーションを高め、持続可能な働き方を実現することが目標とされるべきです。
こうした取り組みが増えることで、障害者雇用の現状が改善され、働く喜びや誇りを感じながら社会参加ができる環境が整っていくことが期待されます。