B型事業所が1年間で約1,500カ所増え、就労選択支援の開始で利用者が事業所を比較検討する時代となりました。差別化できない事業所は選ばれません。具体的な差別化の軸を3つ示し、自所の違いを言語化する手法を紹介します。

B型事業所の急増と選ばれることの重要性

国保連データによると、B型事業所は令和7年度の月平均で19,615カ所、利用者は411,668人で、前年度より事業所が約1,500カ所増えました(廃止を差し引いた純増)。令和8年4月の実績では20,401カ所、432,419人です。この増加の中で、競争環境は急速に激化しています。この規模感は、かつてない競争状況を示しており、事業所の選別が加速していることを意味します。

この流れを加速させるのが、2025年10月から始まった就労選択支援です。この制度は、障害者本人が就労先・働き方についてより良い選択ができるよう、就労アセスメントの手法を活用して本人の希望・就労能力・適性に合った選択を支援するもので、支給決定期間は原則1ヶ月と設定されています。利用者がアセスメントを経て複数の事業所を比較検討した上で利用先を選ぶ仕組みに変わり、これからは利用者自身がこの事業所にしようと判断する時代です。

さらに2026年7月には、民間企業の法定雇用率が2.5%から2.7%に引き上げられました。また厚生労働省は2025年11月28日に就労継続支援事業所の新規指定と指導のためのガイドラインを出し、指定権者が新規指定の際に「利用者の就労の知識及び能力を向上させる支援内容となっているか」などを総合的に審査するよう求めています。同じガイドラインは、「特段の知識等がなくとも事業所の運営は可能であり、高収益が実現できる」といった謳い文句で安易な開設を勧める行為を不適切とし、自立支援給付費から工賃を補填するなど不適切な運営を行う事業所があることにもふれています。短期的な利益で参入する事業所は淘汰される方向に向かっています。この環境では、自所の違いを明確に言語化できる事業所だけが選ばれ続けます。

なぜ差別化が難しいのか

工賃が高いという差別化は、もはや機能しません。B型の基本報酬は2類型です。平均工賃月額に応じて8段階に分かれる報酬体系(人員配置6:1 定員20人以下で1日590〜837単位)と、利用者の就労や生産活動等への参加等をもって一律に評価する報酬体系(同条件で1日584単位)があります。全国の平均工賃月額は令和6年度で24,141円で、2024年度の改定後に事業所数がもっとも増えたのは平均工賃2万〜2.5万円の区分でした。工賃の水準だけで違いを打ち出すのは簡単ではありません。また、アットホームな雰囲気といった表現も、どの事業所も使用しており違いが見えません。差別化の鍵は、利用者の就労基礎動作を高める支援内容を具体的に示すことにあります。これは利用者選択の時代に、最も重視される点となります。

差別化を構築する3つの軸

まず作業内容の専門性です。映像制作やウェブ設計といった現代的な技術を学べるか。重要なのは技術そのものではなく、習得過程を通じて就労基礎動作を身につけられるかという点です。国や自治体による障害者就労施設等からの優先調達は、令和6年度に約246億円と、法施行初年度の平成25年度から約2倍に増えています。実践的なスキルは、事業所の受注を広げることにもつながります。次に支援プログラムの体系性です。段階的に進められる仕組みがあり、支援者が同じ水準の教育を提供できるかです。そして成果の可視化です。利用者の変化を客観的に示せるか。成長が目に見える形になっているかが重要です。

差別化を伝える手法

差別化の軸を決めた後は、伝え方が重要です。特に就労選択支援が制度化され、支給決定期間が原則1ヶ月という限定期間内に相談支援専門員が利用者に対してアセスメント結果とともに事業所を紹介することになったため、説明の簡潔性と具体性がより重要になります。ウェブサイトには作業内容や習得できる技術、進路を階層立てて記載し、「3か月で基礎の課題を終える利用者が約3割」のように、自所の実績を具体的な数字で示すことが効果的です。見学時は実際の課題や利用者の作品、進捗管理の画面を提示し、利用者がどのような段階を経て成長していくかを視覚的に説明します。相談支援専門員向けには、利用者がどのような基礎動作を習得できるのか、具体的な実績数値を交えた資料を用意します。彼らは複数を比較検討するため、判断材料が具体的なほど選ばれやすくなります。

生き残る事業所の条件

2026年以降、事業所の選別が加速します。民間企業に雇用されている障害者が70万4,610人(2025年6月1日時点)と22年連続で過去最高を更新する一方で、特別支援学校高等部の卒業者の約6割が社会福祉施設等へ入所・通所している現状を踏まえると、B型の存在意義はますます「就職へのステップアップ」に重点化していきます。報酬改定やガイドライン強化により、自所の違いを言語化できない事業所は利用者流出の危機に直面します。逆に、どのような技術が身につき、どのような仕組みで支援し、どのような進路があるかを明快に説明できる事業所は、選ばれ続けます。差別化は、事業所の存在意義を整理し、分かりやすく提示する作業です。この着手が遅れる事業所に、残された時間は多くありません。

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出典(確認日 2026年10月10日)

2026年10月10日に数字の出典を確認し 一部を最新の値に改めました。監修 合同会社RP 代表 ミネストローネ