うつで休職した
映像制作工房LACを運営している私自身、ADHDとASDの診断を受けた当事者です。商社に勤めていた2021年、メンタルが限界に達して心療内科を受診し、うつと診断されてそのまま休職しました。5ヶ月間、仕事から完全に離れています。
一番きつかったのは休職4ヶ月目でした。「死にたい」とは少し違って、「もう生きられない」という感覚のほうが近い。年末年始で胃腸が崩れ、ADHDの薬の副作用で日中も眠い。睡眠導入剤のせいで毎晩のように幾何学模様の悪夢を見ていて、眠ること自体がしんどい。回復の実感がないまま時間だけが過ぎていく状態でした。
「仮病みたいで申し訳ない」という罪悪感もありました。傍から見れば身体は動くし、出勤できないほどの明確な症状があるわけでもない。自分でも「本当に病気なのか」と疑う瞬間がありました。
回復は「心」からではなかった
カウンセリングも服薬も続けていましたが、足踏みしている感覚が長く続きました。変わり始めたのは身体の方が先です。
住んでいた豊橋の水道水が合わなかった。静岡に移って、広いバルコニーのある部屋で日光浴ができるようになった。妻の料理で食生活が安定した。乳酸菌飲料を毎日飲むようになって腸の調子が良くなった。どれも「メンタルに効いた」というよりは、身体の土台が整っていくうちに、気持ちのほうが後からついてきたという感じです。
もともと胃腸が弱い自覚はありました。ただ、胃腸薬で症状を抑え込んでいたのがかえって逆効果だった可能性がある。炎症のサインを薬で消してしまうと、身体の警告ごと見えなくなる。口のなかも同じで、うつのときは歯磨きすらまともにできず、放置した虫歯が全身の調子を引きずり下ろしていました。
心をどうにかしようとするより、身体のベースを先に整えた方が早い。いま振り返っても、これは確かな実感です。
LACがコンディションデータを取る理由
映像制作工房LACでは、利用者さまに日報を通じて体調・メンタル・疲労度のコンディションデータを記録していただいています。この仕組みは、自分自身の経験から来ています。心の問題だと思い込んでいたものが、実は身体の問題だった。そういうことが起こりうると知っているから、データで拾えるようにしました。
利用者さまの「やる気がない」「通所が安定しない」を、気持ちの問題として片づけてしまうのは簡単です。しかし、その裏で体調が崩れているだけかもしれない。稼働日数が急に減ったとき、モチベーションではなく身体のコンディションが原因だという可能性を、見落とさないための仕組みです。
在宅で学習している利用者さまだと、なおさらです。通所なら「最近顔色が悪いな」で気づけることも、在宅では見えない。数値で拾うしかありません。
データは答えではなくきっかけ
体調スコアが低いのに完了率100%の利用者さまがいたとします。数字だけ見れば順調です。ただ、それは「無理をしている」サインかもしれない。頑張れている人ほど、周囲は異変に気づきにくい。私自身、休職する直前まで出勤していました。限界に気づけなかったのは、周囲ではなく自分です。
コンディションデータは答えを出すものではありません。支援者様が「この方に今なにが起きているのか」と考えるきっかけです。通所日の疲労度が常に高く在宅日は安定しているなら、通所自体が負荷になっている可能性がある。在宅日だけメンタルスコアが低いなら、孤立感かもしれない。「最近、体調どうですか」と聞く根拠がデータで一つ増える。それだけで、声かけの精度は変わります。
休職の前に、誰かがそう聞いてくれていたら。あるいは、自分のコンディション変化を客観的に見る手段があったら。もう少し早く対処できたかもしれません。あの時ほしかったものを、仕組みにしました。映像制作工房LACのコンディションデータは、そこから生まれています。