在宅就労支援に対する制度上の要件が厳格化されつつあります。2026年3月、札幌市は在宅利用者の割合に上限を設け、精神障がいによる在宅利用には6ヶ月ごとの医師意見書や第三者確認を求める通知を出しました。在宅支援を継続するには「支援効果が認められる」根拠を示すことが必要です。
この流れは札幌市に限った話ではないと考えています。在宅就労支援の利便性が広がる一方で、支援の実態が伴わないケースが問題になっている以上、他の自治体でも同様の方向に進む可能性は高い。事業所様として「うちの在宅支援はちゃんと効果がある」と言える状態を、今のうちに整えておく意味はあるはずです。
映像制作工房LACとは
映像制作工房LACは、就労継続支援B型事業所様向けに動画編集の学習カリキュラムを提供するサービスです。利用者さまはLMS上で講座視聴と課題提出を進め、技術的な質問にはDiscord上でbot・サポーター・エスカレーションの3段構造で対応しています。LACの目的は、映像制作の習得過程を通じて就労基礎動作を身につけ、就職につなげることにあります。
LACは在宅での学習を否定していません。LACのサポーター自身が在宅で業務にあたっていますし、テキストベースのコミュニケーションだからこそ力を発揮できる方もいます。ただし、支援の文脈では、在宅のほうが通所よりも状況把握が難しいことは事実です。だからこそ、データで支援の粒度を高めることが大切だと考えています。
「効果がある」とはどういう状態か
制度上、在宅就労支援に求められているのは「就労に必要な知識・能力の向上に向けた支援」であり、その効果が確認できることです。つまり、「自宅で作業ができている」だけでは足りません。利用者さまが何らかの能力を伸ばしていること、そしてそれを事業所様として把握・記録していることが求められています。
支援者様が日々の関わりの中で利用者さまの成長を感じ取っていても、それを第三者に伝えるには、言語化された記録やデータが必要になります。ここで問われるのは「支援者様の感覚が正しいかどうか」ではなく、「その感覚をどう裏付けるか」です。

6軸評価の月次推移を使う
LACでは利用者さまのスキルを6つの軸(作業速度、正確性、理解力、質問力、修正対応力、安定性)で、0.1刻みで0.5から5.0までスコアリングし、月単位で追跡しています。この月次推移が、在宅支援の効果を示す材料のひとつになります。
たとえば、在宅で学習を続けている利用者さまの修正対応力が、6ヶ月間でC+(1.5)からB+(3.0)に伸びているとします。就労基礎動作でいえば「やり切る力」が育っていることを示すデータです。個別支援計画の評価や、制度上の効果確認において、具体的な数値として提示できます。
逆に、6軸すべてが半年間横ばいであれば、支援内容の見直しが必要なサインかもしれません。制度上も「具体的効果が見られないにもかかわらず支援内容を変更しない」ことは不適切とされています。6軸の推移データがあれば、支援者様がその判断を行うタイミングを逃しにくくなります。
完了率と修正率で「取り組みの質」を示す
LACの運用データには、課題の完了率と修正率(1件あたりの修正回数)も記録されています。在宅利用者さまが課題を完了し続けていること、そして修正回数が徐々に減少していることは、「自宅でも生産活動が行われている」こと、「その質が向上している」ことの両方を示します。
2026年3月時点の集計では、完了率100%を維持している利用者さまの中でも、平均修正回数には0.55から2.22まで幅があります。修正回数が多い利用者さまも、課題を投げ出さずに最後まで仕上げている。この「やり切っている」という事実自体が、就労基礎動作の観点から見て意味のあるデータです。

コンディションデータで「在宅の妥当性」を判断する
在宅支援の適切性を判断するうえで、コンディションデータも重要な材料になります。LACでは利用者さまが日々の体調、メンタル、疲労度を記録しています。
たとえば、通所日に体調スコアが著しく低下し、疲労度が常に高い水準にある利用者さまが、在宅日にはスコアが安定しているというケース。このデータは「通所自体が負荷となっており、在宅のほうが安定して学習に取り組める」ことを示す根拠になり得ます。精神障害により通所が困難なケースにおいて、かかりつけ医への説明や自治体への届出の際に、補助的な資料として活用できる可能性があります。
もちろん、こうしたデータが自治体の審査で直接的にどこまで効力を持つかは、今後の運用次第です。ただ、「支援者様の判断を裏づけるデータがある」という状態を作っておくことは、制度対応の面でも、利用者さまへの支援の質を高める面でも、意味のあることだと考えています。
支援者様の判断が先にある
繰り返しになりますが、在宅支援の適切性を判断するのは支援者様です。利用者さまと直接関わり、変化を感じ取り、次の支援を考える。その仕事をデータが代替することはありません。
LACが提供できるのは、支援者様の判断に使えるデータと、その読み方についての考え方です。6軸評価の推移はどう見ればよいか、コンディションデータのどの変化に注目するか、稼働パターンの急変をどう解釈するか。こうしたことを事業所様ごとの状況に合わせて一緒に考えていきたいと思っています。
在宅就労支援の制度的な要件が厳しくなっていく中で、データがあるから大丈夫ではなく、支援者様が判断するための材料として、こういうデータを一緒に見ていきましょう。その姿勢で、事業所様とともに在宅支援のあり方を模索していければと考えています。