通所している利用者さまであれば、朝の表情、声の調子、動作の速さから、支援者様は「今日はちょっと調子が悪そうだな」と感じ取れます。長く関わっている利用者さまほど、些細な変化にも気づけるはずです。

在宅の利用者さまに対しては、この「気づき」が格段に難しくなります。画面越しのやり取りや、テキストだけのコミュニケーションでは、表情や声色の情報がほとんどありません。気づいたときには、すでに体調やメンタルがかなり悪化しているということもあり得ます。

では、どうすればいいのか。支援者様の観察力を否定するつもりはまったくありません。むしろ、対面で得られない分の情報をデータで補い、支援者様の「気づき」の精度を上げることが大切だと考えています。映像制作工房LACの運用データから、在宅利用者さまの変化をどう読み取れるかを一緒に考えてみます。


映像制作工房LACとは

映像制作工房LACは、就労継続支援B型事業所様向けに動画編集の学習カリキュラムを提供するサービスです。利用者さまはLMS上で講座視聴と課題提出を進め、技術的な質問にはDiscord上でbot・サポーター・エスカレーションの3段構造で対応しています。LACの目的は、映像制作の習得過程を通じて就労基礎動作を身につけ、就職につなげることにあります。

LACでは利用者さまのスキルを6軸(作業速度、正確性、理解力、質問力、修正対応力、安定性)で評価し、0.1刻みで0.5から5.0までスコアリングしています。加えて、日々のコンディション(体調、メンタル、疲労度)も記録しています。これらのデータは支援者様にも共有可能です。


コンディションスコアが伝えること

LACの日報データには、利用者さまが自己申告する体調スコア、メンタルスコア、疲労度スコアが含まれています。たとえば、疲労度が月の平均で4.5を記録している利用者さまがいるとします。5.0が最大値ですから、かなりの負荷がかかっている状態です。

ここで重要なのは、この数字だけを見て「この方は疲れている」と判断することではありません。支援者様に注目していただきたいのは、スコアの変化と文脈です。たとえば、通所日の疲労度が常に高く、在宅日は安定しているという傾向があるなら、通所すること自体が負荷になっている可能性があります。逆に、在宅日のメンタルスコアが低く推移しているなら、自宅にいることが孤立感につながっているかもしれません。

どちらの場合も、数字が答えを出してくれるわけではありません。ただ、「この方に何が起きているのか」を支援者様が考えるための手がかりにはなります。


稼働パターンの急変を見逃さない

もうひとつ、在宅利用者さまの支援で見ておきたいのがLMSへのログイン日数の推移です。LACの運用データでは、月ごとの稼働日数を追跡しています。2026年3月時点のデータで、前月比で稼働日数が半分以下に急減した利用者さまが複数確認されています。

通所であれば「来なくなった」という事実は否応なく目に入ります。在宅では、本人から連絡がない限り、学習が止まっていることに気づきにくい。稼働日数の急減は、体調悪化のサインかもしれませんし、カリキュラムの特定のセクションでつまずいているのかもしれません。あるいは、生活環境の変化が影響している可能性もあります。

原因はさまざまですが、「変化が起きている」という事実にまず気づけることが大切です。支援者様がそれを把握できれば、声をかけるタイミングを逃さずに済みます。


6軸スコアのギャップが示すもの

LACの6軸評価では、利用者さまごとに各軸のスコアを比較できます。2026年3月時点の集計では、利用者さま全体の34%で、最も高い軸と最も低い軸の間に2.0以上の開きがあります。

在宅利用者さまに特に注目したいのは、このギャップのパターンです。たとえば、質問力がA(4.0)で作業速度がC(1.0)という乖離があるとき、テキストでのやり取りはできているが、実際の作業は進んでいない状態が想像できます。在宅環境では、質問という「コミュニケーション」の部分は維持しやすい一方で、作業を自力でやり切る部分に支援の手が届きにくいことがあります。

こうした傾向を支援者様が把握していれば、「質問はよくしてくれるけど、作業の仕上がりをもう少し一緒に確認しましょうか」といった具体的な関わりにつながります。


データを「問いかけ」として使う

ここまでいくつかのデータの読み方をご紹介しましたが、強調したいのは、データはあくまで支援者様の判断を助けるものだということです。コンディションスコアが低いからといって、すぐに在宅をやめるべきとは限りません。稼働日数が減ったからといって、本人に問題があるとも限りません。

データは「答え」ではなく「問いかけ」です。「この数字が動いているけれど、この方に何が起きているのだろう」と考えるきっかけを支援者様に提供すること。それがLACのデータの役割だと考えています。

在宅だから支援が薄くなるのではなく、在宅だからこそ、対面で得られない情報をデータで補いながら支援の粒度を高めていく。そのための仕組みと使い方を、支援者様と一緒に考えていければと思っています。