厚生労働省は2025年11月28日、「指定就労継続支援事業所の新規指定及び運営状況の把握・指導のためのガイドライン」を自治体に示しました。新規指定では「利用者の就労の知識及び能力を向上させる支援内容となっているか」などを総合的に審査するよう求め、既存事業所の運営指導でも支援の実施状況や工賃の原資を確かめる観点を並べています。2026年9月の報酬改定検討チームでは、その一部を指定基準などに位置づける方向性も示されました。事業所に求められているのは、支援の中身を書類と記録で説明できる状態にしておくことです。
ガイドラインは何を示したのか
このガイドラインは厚生労働省障害福祉課長の通知(障障発1128第1号)で、都道府県・指定都市・中核市(指定権者)に向けた地方自治法上の技術的な助言です。通知の前文は、就労継続支援B型について「自立支援給付費から利用者への工賃を補填するなど、不適切な運営を行っている事業所がある」と指摘されていることにふれています。
新規指定については、指定権者が、障害福祉サービスや就労支援事業会計に必要な知識を持っているか、利用者の就労の知識及び能力を向上させる支援内容となっているか、安定した収益が見込める生産活動を確保する計画となっているか等を総合的に審査するよう求めています。スケジュール例では、指定の5か月前の事前説明から、事業計画書等の審査、専門家会議、指定申請、現地審査へと段階を踏む流れが示されています。
生産活動についても具体的です。ガイドラインは、eスポーツ、植物の水やりを1日数回行うだけの活動、所定の場所に居ればよいというような活動などを「公費による就労支援の生産活動として適さない可能性がある活動」の例に挙げています。そのうえで、その生産活動によって一般就労に必要な能力向上が見込まれるか、地域に習得した能力が活かされる労働市場や求人があるか、といった観点で確認するよう求めています。
既存事業所の運営指導で確かめられること
ガイドラインは新規指定だけでなく、既存事業所の運営状況の把握・指導の観点も示しています。支援内容については、個別支援計画の作成やモニタリングが行われているか、利用者の心身の特性に応じた適切な訓練が行われているかを、サービス提供記録等で確認するとしています。
お金の流れについては、生産活動シートを使って生産活動収入と工賃の支払総額を比べ、生産活動収支から工賃が支払われているかを確認するよう求めています。生産活動収支が工賃より少ない場合は、自立支援給付費など生産活動収入以外から補填している可能性があるとして、より詳しく実態を把握するとしています。平均工賃月額の算定に自立支援給付費を含めていないかも確認の視点です。
工賃と自立支援給付費の関係
指定基準(平成18年厚生労働省令第171号)では、B型の事業者は生産活動の収入から必要な経費を差し引いた額を工賃として支払うこととされています(第201条第1項)。また、第202条で準用する第192条第6項により、工賃の支払いに要する額は、災害その他やむを得ない理由がある場合を除き、原則として自立支援給付をもって充ててはならないとされています。ガイドラインも新規指定の段階で、自立支援給付費による補填はできないことを周知するよう求めています。
ガイドラインはさらに、発注元が運営法人等で、自立支援給付費等を業務委託費の原資としているため、書類上は受発注があるように見えても実質的に自立支援給付費から工賃を支払っている事例があると注意を促しています。
ガイドラインを基準に位置づける議論
2026年9月28日の第64回障害福祉サービス等報酬改定検討チームの資料では、ガイドラインについて、指定権者が事業所に強制力をもって働きかけることが難しいとの意見があることが課題に挙げられました。検討の方向性として、事業計画書を管理者が責任をもって作成又は把握すること、他事業所の書類の流用を原則認めないこと、生産活動の適切性、生産活動シートの作成と指定権者への提出・ホームページでの公表などを、施行規則や指定基準等に位置づけてはどうかと示されています。
同じ資料では、B型には生産活動収支が工賃総額以上となることを求める規定がA型と違って設けられていないとして、これを指定基準に位置づけてはどうかという方向性も示されました。関連法人から作業を受注することが利用者の役割につながる場合もあるため、関連企業との取引を一律に不適切とすべきではないことにも留意するとしています。いずれも論点と検討の方向性の段階で、決まった内容ではありません。
背景として、同資料によるとB型は令和7年度の月平均で19,615カ所、利用者411,668人、令和8年4月の実績では20,401カ所、432,419人に増えています。
支援の現場で使えること
ガイドラインが確認の観点として挙げているのは、特別な書類ではなく、日々の支援を説明できるかどうかです。どの事業所でも次のように整理しておくと、指導や指定更新の場で説明しやすくなります。
- 支援プログラムを段階に分けて書き出す。何をどの順で行い、各段階で何ができるようになることを目標にするのかを一枚にまとめる
- 各段階の目標と、個別支援計画の目標がどう対応しているかを示せるようにする
- サービス提供記録に、その日どの段階のどの目標に取り組んだかを残す
- モニタリングで到達状況を確かめ、個別支援計画を見直した経緯を記録する
- 生産活動が一般就労に必要などんな力につながるのか、地域のどんな仕事や求人につながるのかを、言葉で説明できるようにしておく
- 福祉事業会計と生産活動会計を分け、生産活動収支と工賃の支払総額を毎月比べる
これから開設を考えている場合は、事業計画書を事業所の実情に合わせて自分たちで書くこと、開所予定地の市区町村に事業計画を説明してニーズを確かめておくことも、ガイドラインが示している流れです。
企業の担当者へ
就労継続支援事業所に作業を発注している企業は、取引の実態が問われる側でもあります。ガイドラインは、業務委託費が妥当か(取引価格や単価が過大又は過小に設定されていないか)を確認の観点に挙げています。発注する作業の内容と量、単価の根拠を契約書や納品書で示せるようにしておくと、事業所側の説明も通りやすくなります。
今日のポイント
厚生労働省のガイドラインは、利用者の力を伸ばす支援をしているかと、工賃が生産活動の収入から払われているかの2点を記録で確かめる方向を示しています。支援の段階と目標と記録をつなげて説明できるよう、今の取り組みを整理しておきましょう。
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出典(確認日 2026年10月10日)
- 厚生労働省 障害福祉課長通知「指定就労継続支援事業所の新規指定及び運営状況の把握・指導のためのガイドラインについて」(障障発1128第1号 2025年11月28日) https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001602338.pdf
- e-Gov法令検索「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準」(平成18年厚生労働省令第171号)第201条 第202条 https://laws.e-gov.go.jp/law/418M60000100171
- 厚生労働省 障害福祉サービス等報酬改定検討チーム 第64回 資料「就労系サービスに係る報酬・基準について≪論点等≫」(2026年9月28日) https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001752771.pdf
2026年10月10日に数字の出典を確認し 内容を最新の制度に合わせて改めました。監修 合同会社RP 代表 ミネストローネ