応援ソングライター yu-kaさん

応援ソングライターとして活動するyu-kaさん。ADHD当事者としての経験を経て、人の想いを曲にするという仕事にたどり着くまでの道のりと、発達障害×クリエイターの現実について、インタビューと対談でお届けします。

インタビュー

yu-kaと申します。兵庫県生まれで、今は神戸に住んでいます。関西学院大学の国際学部を卒業しました。趣味は音楽、カフェ巡り、自然豊かなところに身を置くことですね。趣味が仕事みたいな感じでもあります。

ADHDの不注意優勢型です。忘れ物がかなり多かったり、事務作業が苦手でミスがあったり。一番困っているのは時間の逆算が苦手なところです。うつがひどい時に手帳を取得して、2級を持っています。20歳の時にADHDの診断を受けたんですけど、診断前はなぜ自分がこんなミスをするのかわからなくて、落ち込んで終わり、自分を責めて終わりでした。診断を受けた後は、こういう自分だからこういう対策をしようという気持ちに変わりました。

子供の頃は結構おとなしかったんですけど、リーダーを任されることがあって、軽音楽部の部長とかやっていました。大学でアルバイトを初めてやって、とことん惨敗しました。アルバイトだけで10回くらい転々としていて、一番苦労した時期でした。飲食店で接客をやっていたんですけど、目で見て判断して動くことが苦手だとわかって、身を置く場所を変えようと思いました。住宅展示場の呼び込みとか携帯電話のプロモーションをやったら、うまくいきだしたんです。

就職してからは地域のPRをする仕事でやりがいはあったんですけど、マルチタスクが苦手で苦労しました。退職して、インタビューライターの資格を取って2社目に転職しました。1社目では広報誌の編集・校正を担当していて、何回もチェックしてるのにライターさんが書いた記事の間違った情報を見抜けなかったり、勉強会の名簿を作る仕事で名前を書きそびれてしまったり。大切に思っているのに行動で伝わらないのがつらかったです。

今は応援ソングライターとして活動しています。人の想いを聞いてオリジナルの曲を作ったり、発達障害に関する曲を学校や地域で講演ライブとしてお届けしたりしています。それとウェディングプランナーの仕事、あとは家業の事務仕事もやっています。

応援ソングライターになったきっかけは、2社目の会社で働いていた時のことです。LGBTの当事者である友人から、全国での講演のためにクラウドファンディングに挑戦したいから曲を作ってほしいと言われたんです。それまで人のために曲を書いたことはなかったんですけど、やってみようと思って。その結果クラファンが成功して、曲を通じて私の友達がその方を支援してくれたりして、曲で人繋ぎをしたいと思いました。

特性が活きていると思うのは、ADHDの拡散思考ですね。頭がとっ散らかっていると言われがちなんですけど、関係ない2つの事象を組み合わせて歌詞ができたり、言葉遊びのアイデアが湧きやすい。ウェディングプランナーに関しては、人と話して仲良くなったり、想いを聞いて提案するところで、聴覚優位が関係しているかもしれません。

発達障害に関する曲を初めて人前で歌った時に、転職中の方が涙してくださって、特性をオープンにして頑張ろうと言ってくださったのはすごく嬉しかったです。仕事で人の役には立てないと思っていたので。

人生のターニングポイントは大学4回生の時です。診断を受けてから1年くらいは当事者の方と会う機会がなかったんですけど、就活のキャンプで初めて自分もそうだよという方に10人くらい会えたんです。特性を明るく開示している先輩がいて、電車を逆方向に乗っちゃうとか道が覚えられないということを仕事仲間にヘルプを出したら、みんなが時刻表を送ってくれたりしていた。弱みを打ち明けることで助け合える。それを見て、もっと自分のことをオープンにしていけたらいいなと思いました。

鬱になった経験があるからこそ言いたいのは、まず休んで大丈夫ですということ。好きなことをたくさんやってほしい。自分のダメなところに目が向いている時こそ、周りの友達や親しい方に「私の長所って何だと思う」と聞いてみてほしいです。それで徐々に自分の素敵なところを見つけて、自信をつけていただけたら嬉しいなと思います。

対談 発達障害×クリエイターの現実

ーーー「発達障害はクリエイターに向いている」ということがよく言われるんですけど、個人的にはそれって何も言ってないのと一緒だなと思っていて。発達障害にもいろいろあるし、クリエイターにもいろいろある。解像度が低い話をもう少し具体的にしてみたいと思いました。

曲を作る過程でいうと、ADHDの拡散思考は恩恵を受けているかなと思います。頭の中が多動で、一見関係ない事柄を結びつけてアイデアにできるところは作詞に役立っています。

ーーー自分の場合はASD的な特性で、細かいことをずっとひたすらやるというのが動画編集に向いている気がしています。同じ発達障害でクリエイターといっても、活きる部分は全然違う。もし「発達障害者がクリエイターに向いている」と言うのであれば、もうちょっと言い方があるだろうと。

自分の特性が何なのかを見つけた人が、それに合うスキルを身につけて、そのスキルがお金になるということがわかって、持ってない特性を補ってくれる人を見つけたら、やっとクリエイターになれると思っています。

ーーーそこが大事なところで、安易に「向いてるって言われたからクリエイターになろう」は危険だと思っています。フリーだとクライアントと直接やりとりするので、コミュニケーションはむしろ増える。それから、自分の作ったものに値段をつけてもらうというきっかけが必要で。プレゼント志向が強いから「お金ください」と言うのが一番大変だったりする。

私も最初はボランティアで応援ソングを作っていて、曲にどれくらいの価値があるかアンケートを取って、理由も聞いた上で徐々に自信がついていきました。

ーーーそれからもう一つ、苦手なことを任せる人を見つけるのも同じくらい大事で。自分は作るのは得意だけど折衝や企画は好きじゃないので、そこを誰かに任せる。その人にはお金も払う。そうなると、発達障害のクリエイターは自分のスキルで2人分稼ぐ必要がある。

スケジュール管理の部分を秘書的なことが得意な方に助けてもらったり、逆に自分は誰かのPRが得意なのでそこで貢献したり。お互いの得意・苦手を補い合う仕組みが必要ですね。

ーーーyu-kaさんはフリーで活動されているということで、フリーランスの功罪みたいなところをお聞きしたいなと思っていて。自分も何回かフリーになろうかなと思ったことはあるんですけど、正直結婚するよりよっぽど大変だなと思っています。

危険な賭けに出たなって自分でも思います。前の会社を急に辞めざるを得ない事情があって、転職も難しい状況だったので、フリーで生きることを決意しました。軌道に乗るまで1〜2年くらいかかって、アルバイトも掛け持ちでやっていました。正直、会社員+副業が最強かなって個人的には思っています。

ーーーそこをギャーっと進めるのがADHD持ち前の思い切りの良さで、強みでもあるんですよね。ただ、戦略はあるけど先が見えない中で進むトルクとスピードを維持するのは、自分にはないので副業をしています。

助けてもらったり伴走してもらったりしたから今がある。1人で走っていたらどこかで挫けていたかもしれないです。フリーだからこそエネルギーをかけられるという部分はありますけど、苦手なことも含めて全部自分で責任を取る必要があるので、補ってもらえないと大変です。

ーーー以前yu-kaさんが設立されたLASS to the dreamさんの活動が2018年頃に止まっていて、その経緯から学びたいと思いました。

発達障害の先輩がどのように特性を活かして生活しているのかを純粋な好奇心で取材し始めたんですけど、資金面を含めた色々な面から持続性に乏しかった。思いさえあれば続いていけるだろうと思っていたのが甘かったですね。メンバーも仕事を辞めて就活で忙しくなったりして、時間が割けなくなってしまいました。

ーーーお金の問題はつきまとってきますし、あとは意思決定の問題もありますよね。5人で団体をやっていると、船頭が多くなってしまう。

今はフリーで基本的に自分が最終的に意思決定するという形に変えていて、そこは大事かなと。こだわりが強い部分があるので、メンバーに迷惑をかけた経験もあります。起業するなら1人でやって、同じ志とスキルを持っている人ではなく、自分を補佐してくれる人を見つける方がいいと思います。

編集後記

yu-kaさんの話を聞いていて一番響いたのは、「大切に思っているのに行動で伝わらない」というエピソードでした。名簿の書きそびれも交通費の計算ミスも、手を抜いているわけではない。けれどそう見えてしまう。その辛さは、不注意優勢型のADHDを持つ方の多くが経験しているのではないかと思います。

対談で印象的だったのは、「発達障害はクリエイターに向いている」という言葉に対する解像度の問題でした。ADHDの拡散思考が作詞に活きる、ASDのこだわりが動画編集に活きる。同じ「クリエイター向き」でも、活きている特性は全く違います。そして、特性を見つけてスキルにしてお金にして、苦手を補う人を見つけて、ようやくクリエイターになれる。その道のりは安易なものではないというyu-kaさんの言葉は、とても地に足のついた話だと感じました。

LASS to the dreamの活動停止のエピソードも正直に語ってくださったことが印象に残っています。思いだけでは続かない、マネタイズが必要だという話は、自分自身の活動にも当てはまることで、身が引き締まる思いです。弱みをオープンにして助け合おうというyu-kaさんの姿勢は、応援ソングライターという仕事そのものだと感じました。