発達障害当事者会「せんぼくムーン」を主催するつかささん。ご自身のこれまでの歩みと、自助会への思いをインタビューと対談でお届けします。

インタビュー

大阪府の出身で、今も大阪に住んでいます。年齢は40代です。短期大学では経理関係を学んでいました。趣味はドライブ、音楽、写真撮影ですね。もともと音楽が好きで、家族の写真を撮ったり、知り合ったアーティストさんのところで写真を撮ったり、そういうところでつながっている部分があります。

ADHDとうつがあります。精神障害者手帳2級を取得しており、10年以上前のことになります。ADHDだと知ったこと自体はよかったんですけど、受け入れるところまでがすごく時間がかかりました。診断を受けてすぐは戸惑いの方が大きくて、数年間はなかば渋々状態で過ごしていました。

高校の時からもともと商業高校で、経理関係の勉強をしていました。短大も経理の方に進んだんですけど、企業が求めるスキルまで学力を上げることができなくて、経理は諦めて違う職種に進むしかなかった。高校生くらいの頃から、友達と話していても他の方より学力が足りないなと感じていて、先生にアドバイスをもらいながら路線を変えていく、そういう形でした。

そこから転職を繰り返していたんですけど、当時はまだ何も気づいていなくて。行政機関の方にヒアリングしてもらって「だいぶ無理してますよ」と言われて、ようやくそこで気づいたんです。手帳を取得する段階で、自分に合わない仕事だったんだなと少し方向が変わってきました。

最後の通院の時に「今安定しているから通院はいいでしょう」と言われたことが一つのポイントで、障害者ではないけれど安定期なんだという感覚があったので、手帳を取得するまでの期間がかなり長くなりました。

同じ職場だったんですけど部署が変わって、24時間勤務の交代制になったんです。環境が変わって日常生活も一転して、自分の求めていた過ごし方ができなくなった。精神的にストレスがかかりすぎていて、それが転機にもなったかなと思っています。

手帳を取得してから障害者雇用で就活を始めたんですが、当時はとても大変でした。一から全部自分でやらないといけなくて、しんどい日々が続いてモチベーションも下がりました。行政の方の力をいただいて、障害者就業・生活支援センターさんで何度も面談を繰り返して、地元の機関を紹介してもらったり、面接に同席してもらったりしました。何度もトライして、ようやく道が開けた時が一番モチベーションが上がったかなというところですね。

担当者さんからA型B型もあるけど無理に行く必要はないよと言われまして、一度だけ体験で行きましたが、今の生活を継続するためには先に就職した方がいいねという判断でした。もともとそこまでひどくなかったというところもあって、A型B型までは必要ないでしょうということでした。

現在は障害者雇用で事務職をしています。コロナ禍の時に有期雇用で、求人自体が事務しかなかったので、半ば妥協というところもありました。それ以外に、発達障害の当事者会「せんぼくムーン」を主催しています。仲間がやっているのを見ていて、コロナ禍だったのでオンラインでやってみようかなという軽い気持ちで始めました。

他の自助会のリーダーさんからお話を聞いて、これくらいだったらそんなにしんどくないだろうなという加減を自分で見ながら開催していく。だんだん身体に馴染んでくると、そんなにしんどくない。ADHDは継続するのがしんどいところがあるので、ストレスを感じるようになったらやめればいいという話なんです。

参加者の方から「楽しかった」という声をいただいた時はエネルギーをもらえて、やっておいてよかったという嬉しさがありました。生きづらさは人それぞれ異なります。自助会に行ったから解決するというわけではないんですけど、環境を変えるヒントは日々探していただく方がいいかなと思います。一人でできることは一人で、一人でできない時はみんなに頼る。それだけで少しは楽になるんじゃないかと思っています。

対談 せんぼくムーンと得意の補い合い

ーーー大阪で発達障害の当事者会をやられているつかささんにお話を伺っています。自分は自助会に行ったことがなくて、自助会がどういう役割を持っているのか、主催する側・参加する側それぞれにとってどういう存在なのかをお聞きしたいと思いました。

自助会というのは、同じ悩みを持つ当事者の場だと思っていただければと思います。せんぼくムーンに関しては、そこまでこだわりは持たずに、参加者の方々が自分らしくいられる空間であればいいなという形で活動しています。

ーーー開催することで参加者にどんな変化があるのかが気になります。

当事者の皆さんにはコミュニケーションがうまくいかないという方もいらっしゃるので、話ができる場所というところに視点を置いています。自分のことを打ち明けることで少し気持ちが楽になったり、ご家庭や外では健常者の方がとても多いので、思い込みがかなり強くなるんですね。当事者会に行くことで、その思い込みが少し軽くなるかなと思っています。

ーーー参加者の人数や雰囲気はどんな感じですか。

主催者さんにもよるんですけど、多い自助会だと20名以上のところもあれば、1人のところもあります。リピーターさんもいれば新規の方もいて、実はバラバラなんです。毎月必ず参加しなきゃいけないものでは全然なくて。自助会というのは自分が楽になるためのものなので、義務になってしまうとハードルが上がってしまう。ちょっと行ってみたいなという感じで来ていただけると嬉しいです。

ーーー行く一歩が出せないという方もたくさんいると思います。何か工夫はされていますか。

過去にオンラインで開催したことがあります。家から出るのがしんどいという方もいらっしゃるので、そこそこの人数が集まりました。まずオンラインで話してみて、この雰囲気だったらひどいことにはならないだろうなと思っていただけたら、会場に来てくれればそれでいい。出向くのがしんどい時は、自分がしんどくない方法で参加していただく方がいいかなと思います。

ーーー主催する側の困り事もあるんじゃないかと。

継続するというのが一つありますし、予約もしないといけない、会場も決めないといけない、お知らせもしないと誰も来ない。自助会の主催って、ADHDが苦手なことがてんこ盛りなんです。ルーティン化していくと割と慣れてくるんですけど、他のタスクが増えてくると忘れてしまう。開催する時は自分の特性以上のことはせずに、楽に続けられる状態にしておく方がいいですね。

ーーーせんぼくムーンが目指す姿と、つかささんご自身がどうなりたいかを教えていただきたいです。

参加者さんがここに来たら面白いとか楽になるとか、自分の居場所を作って、そこにみんなが来てくれる。それが盛り上がって楽しくなって、口コミで広がって、また行きたいなとみんなが思ってくれる。そういう場所にしたいですね。

ーーーそもそもつかささんと最初にお会いしたのは、応援ソングライターのyu-kaさんのインタビューをしようとした時でした。マネジメントをされている方ということで同席いただいたのが最初の出会いだったかなと思っています。yu-kaさんのサポートをされるようになった経緯が気になります。

yu-kaさんが以前やっていた自助会に参加したのがつながりの始まりです。そこからライブ関係やいろんな交流を経て、yu-kaさんからのお誘いでサポートをさせていただくようになりました。

ーーー得意を生かして苦手を補うって口で言うのは簡単だけど、一筋縄じゃいかないところがあると思います。お互いの得意なところ、苦手なところはどう見ていらっしゃいますか。

yu-kaさんの得意なところは、多彩なスキルがあること、人の長所を見つけるのがすごく敏感なこと、人のつながりをとても大事にされているところです。苦手なところは、時間管理とか忘れ物とかマルチタスクですね。自分自身については、ルーティンワークと継続力が得意だと思っています。苦手なところは人との距離感と、方向音痴がまだ直らないことと、スキルを極めるということがなかなかできないことです。

ーーーADHD同士だとより大変になるような気もしてしまうんですが、そうじゃないんですよね。

ADHDはデコボコの部分がみんなバラバラなんです。だから相性も違う。じゃあこういうふうにしたら合うなという感じで調整していく。特別なことはしていなくて、誰かに言われるんじゃなくて、自分はここだったらうまくできる、ここはしんどいというのをお互いに理解するということですね。

ーーー苦手なところを改善する方がやっぱりしんどいですか。

苦手なところを「直せ」と言うと、一番ダメなところをより引き出してしまうので、良いところを見つけてもらってそこを伸ばしてほしい。自助会は自分を見つめ直すきっかけにもなりますし、人に言ってもらうことで新たな気づきが得られる場所だと思います。自分では当たり前だと思っていることこそが、意外と強みだったりしますから。

編集後記

つかささんの話を聞いていて印象に残ったのは、自助会を始めた理由が「軽い気持ちだった」というところでした。継続がしんどいはずのADHD当事者が、自助会という継続が前提の活動を主催している。その矛盾を、つかささんは「ルーティン化すれば慣れる」「しんどくなったらやめればいい」という形で軽やかに受け止めていました。

経理を諦めて転職を繰り返し、行政に「だいぶ無理してますよ」と言われてようやく気づいたという経緯は、診断が出てもすぐには受け入れられなかったつかささんの歩みそのものだと思います。数年間の渋々状態を経て、手帳を取得し、障害者雇用で事務職に就き、自助会を立ち上げた。一つ一つの選択が「妥協」や「軽い気持ち」から始まっているのに、振り返ると確かに前に進んでいます。

対談で出てきた「ADHDのデコボコはみんなバラバラ」という話も印象的でした。ADHD同士なら余計に大変になるんじゃないかという問いに、つかささんは「相性が違う、だからこう合わせればいい」と返していました。苦手を直すのではなく、良いところを見つけて伸ばす。それを自分一人ではなく人の目を借りてやる場所が自助会だというのは、せんぼくムーンが目指している姿そのものだと感じました。