就労移行支援体制加算は、一般就労への定着に向けた継続的な支援体制が構築されている事業所を評価する加算です。前年度にサービスを利用したあと一般就労し、6か月以上働き続けている人が1人以上いれば、翌年度の報酬に上乗せされます。上乗せは就職した人の分だけでなく、利用者全員の毎日の報酬に乗ります。厚生労働省の資料と告示をもとに、要件と計算、その後の見直しを整理します。
※大阪市が認定した内容について、会社は見解が異なるとして裁判で争っています(2026年10月31日現在)。
対象のサービスと加算の趣旨
2026年2月18日の報酬改定検討チームの資料によると、この加算は生活介護、自立訓練(機能訓練・生活訓練)、就労継続支援A型、就労継続支援B型に設けられています。資料は加算の趣旨を、一般就労への定着に向けた継続的な支援体制が構築されている事業所の評価と説明しています。就職させた数そのものより、就職したあとも働き続けられるように支える体制を評価する、という建て付けです。
算定の要件 6か月の定着と翌年度
A型の告示では、事業所でサービスを受けたあと就労し、就労を続けている期間が6か月に達した人を「就労定着者」と呼びます。前年度に就労定着者が1人以上いるとして都道府県知事に届け出た事業所が、その年度に加算を算定できます。
告示のいう就労からは、A型の事業所などへの移行が除かれています。A型から別のA型に移っても、就労定着者には数えられません。
計算のしかた 全員の毎日の報酬に乗る
告示では、1日につき、利用定員と評価点に応じた所定単位数に就労定着者の数をかけて加算します。この上乗せはその日にサービスを使った利用者それぞれに付くので、厚生労働省の資料は、所定単位数に前年度の実績の人数と利用者数をかけた単位数と説明しています。
A型の単位数は、定員、職員配置、基本報酬の区分に応じて1日50〜93単位です。仮に1人あたり50単位の区分で、前年度の就労定着者が2人、ある日の利用者が20人なら、その日の上乗せは50×2×20で2,000単位になります(説明のための仮の数字です)。就労定着者が1人増えるごとに、全員分の毎日の報酬が増える仕組みです。
数え方の決まりが重ねられてきた
2024年度の報酬改定では、同じ利用者について過去3年間に算定実績があれば、原則として算定できないこととされました。2026年4月には、1年に数えられる就労定着者の数を前年度9月30日時点の定員数までとし、ほかの事業所で算定された人も原則として数えられないことを明確にしています。
大阪市が認定した内容
大阪市は2026年3月27日、A型の4事業所の指定を取り消すと発表しました(効力は5月1日)。市の発表によると、事業所は独自の支援方針のもとで、A型の利用に戻ることを前提にした自社での雇用を就職として扱い、この加算を請求していました。市は、こうした自社雇用は支援計画の過程の一部にすぎず、定着に向けた継続的な支援体制が構築されているとは評価できないとして、不正な請求にあたると認定しています。返還請求額は、加算金を含めて約110億8千万円です。会社は、市の評価には見解が異なると発表しています。
支援の現場で使えること
加算が評価するのは、就職した数ではなく、定着を続けて支える体制です。送り出したあとの職場訪問や面談の記録を残しておくと、定着をどう支えたかを説明する材料になります。利用者や家族が事業所を選ぶときは、就職した人数に加えて、就職先でどのくらい働き続けているか、就職後に誰がどう支えているかを聞けます。
企業の担当者へ
A型などから就職した人を迎えるときは、就職後に事業所がどのように定着を支えるのか、困ったときに誰に連絡するのかを、最初に決めておけます。
今日のポイント
就労移行支援体制加算は、就職の数ではなく定着を支える体制を評価する加算です。1人の定着が全員の毎日の報酬に乗るため、数え方の決まりが重ねられてきました。
※大阪市が認定した内容について、会社は見解が異なるとして裁判で争っています(2026年10月31日現在)。
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出典(確認日 2026年10月10日)
- 厚生労働省 障害福祉サービス等報酬改定検討チーム 令和8年度障害福祉サービス等報酬改定における改定事項について(2026年2月18日) mhlw.go.jp
- 指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の一部を改正する告示(令和8年こども家庭庁・厚生労働省告示第5号 2026年3月31日) mhlw.go.jp
- 厚生労働省 今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会 第7回 資料1(2025年6月25日) mhlw.go.jp
- 大阪市 報道発表 就労継続支援A型事業所の指定取消し等について(2026年3月27日) city.osaka.lg.jp
この記事の案内役 結城ユイは、制度と実務の解説の案内役(架空のキャラクター)です。監修:合同会社RP 代表 ミネストローネ