2026年3月27日、大阪市は就労継続支援A型の4つの事業所の指定を取り消すと発表しました。市は、就労移行支援体制加算という報酬の上乗せを不正に請求したと認定しています。A型は障害のある人が雇用契約を結んで働く福祉のサービスで、全国に4,000か所以上あります。この記事では、A型の仕組み、市が認定した内容、その後の動き、事業所を選ぶときに何を見ればいいかを順に整理します。
※大阪市が認定した内容について、会社は見解が異なるとして裁判で争っています(2026年10月31日現在)。この記事は、行政の発表、報道、会社の発表、国会での答弁を区別して書いています。社名や個人名は出していません。
就労継続支援A型の仕組み
就労継続支援A型は、支援があれば雇用契約にもとづいて働ける障害のある人のための、障害者総合支援法の福祉サービスです。利用者は事業所と雇用契約を結ぶので、最低賃金をはじめ労働の法律がそのまま当てはまります。利用できる期間に決まった上限はありません。
厚生労働省の資料では、2025年1月の時点で事業所は4,368か所、利用者は8万4,704人です。10年で事業所はおよそ1.7倍、利用者はおよそ1.9倍に増えました。2024年度の報酬改定のあとは減る傾向にあります。
お金の入り口は2つ
A型のお金の入り口は2つあり、会計を分けることになっています。利用者に払う賃金は、商品やサービスを売った生産活動の収入から払います。生産活動の収入から経費を引いた額が賃金の総額以上であることが求められ、給付費から賃金を払うことは2017年4月から原則として禁じられています。支援員の給料など事業所を運営するお金は、国と市町村から出る給付費(報酬)です。
給付費の基本の額は、2021年度から始まったスコア方式で決まります。いまは労働時間や生産活動など7つの項目の点数で、定員20人以下・人員配置7.5対1の事業所の場合、170点以上で1日791単位、60点未満で1日325単位と、2倍以上の差がつきます。
就労移行支援体制加算とは
この基本の報酬に上乗せされるのが、就労移行支援体制加算です。一般就労への定着に向けた継続的な支援体制がある事業所を評価する加算で、前の年度にA型を利用したあと一般の会社に就職し、6か月以上働き続けている人が1人以上いれば、翌年度に算定できます。
計算は、評価点に応じた単位数(1日50〜93単位)に前年度の実績の人数をかけ、さらに利用者の数をかけます。就職した人が1人増えると、その人の分だけでなく、利用者全員の毎日の報酬に上乗せが乗る仕組みです。
2024年4月の報酬改定では、同じ利用者について過去3年以内に加算の算定実績があれば、原則として算定できないという決まり(いわゆる3年ルール)が入りました。例外は、都道府県知事や市町村長が適当と認めた場合です。
大阪市が認定した内容
大阪市の発表によると、市は4事業所が就労移行支援体制加算を不正に請求したと認定し、指定を取り消しました。4事業所とも大阪市中央区にあり、取り消しの効力が出たのは2026年5月1日です。
市の文書では、事業所には「36ヶ月プロジェクト」という独自の取り組みがあり、A型の利用に戻ることを前提にした自社での雇用を「就職」として扱い、加算を請求していたとされています。市は、この自社での雇用を、定着に向けた継続的な支援体制とは評価できないと判断しました。過去3年以内に同じ人を重ねて数えたことについても、市町村長が適当と認める例外には当たらないとしています。
79億円と110億円
対象の期間は2024年4月から2026年1月まで(1事業所は2025年4月から)で、対象は大阪市が支給を決めた利用者883人分です。市が不正請求と認定した額は約79億円(79億1,179万円)で、40%の加算金約31億6千万円を合わせた返還請求額は約110億8千万円(110億7,650万円)になります。
ニュースでよく見る約150億円は、大阪市の約79億円に、ほかの75の市町村の分約71億円を足した報道による数字で、行政が確定させた額ではありません。給付費は利用者が住む市町村が払う仕組みのため、ほかの市町村から通う人の分は、それぞれの市町村の判断になります。
会社の発表
会社は2026年3月27日、このプロジェクトを不正とする評価には見解が異なり、法的な手続きの中で主張していくと発表しました。3年ルールについては、解釈と確認が十分ではなかったと説明しています。
その後の動き
大阪市の一斉調査
大阪市は2025年11月から12月にかけて、市内の全1,649事業所にアンケートを行い、1,319事業所(80.0%)から回答を得ました。2024〜2025年度に加算を届け出た271事業所の書類を調べたところ、34事業所(12.5%)で、要件に触れるおそれのある同じ就労定着者の名前が見つかったと2026年2月12日に公表しています。市長は、現時点では可能性や疑いの段階だと述べ、事業所名は公表していません。
国の見直しと国会
国は2026年4月の臨時応急的な見直しで、1年に算定できる就職者の数に定員の数という上限をつけ、ほかの事業所で過去3年に算定実績がある利用者も算定できないことを明確にしました。厚生労働省の資料は、その理由として、同じ利用者がA型と一般企業の間で離職と就職をくり返し、そのたびに加算を取る事業者の報道を挙げています。加算のあり方は、2027年度の報酬改定に向けて議論されます。
2026年6月1日の参議院決算委員会では、厚生労働大臣が「極めて遺憾だと考えています」と答えました。3年ルールと定員までの上限を説明し、2027年度の改定に向けて、サービスの質を確保する対応を検討するとしています。
働いていた人と利用者
4つの事業所は2026年4月30日に閉鎖されました(会社の発表と報道)。厚生労働省は大阪労働局に出張相談や説明会を指示し、大阪労働局は3月31日から府内のハローワーク全16所で、雇用保険や求人、担当者制の職業相談などの特別相談を始めました。報道によると、影響を受けた利用者は1,000人以上です。7月には元従業員と利用者の計12人が、解雇の無効や未払いの賃金などを求めて裁判を起こしたと報じられています。
続いている手続き
報道によると、会社側は2026年4月17日、返還請求の決定の取り消しなどを求めて大阪地裁に裁判を起こしました。大阪市は4月30日、代表ら5人を詐欺の疑いで大阪府警に告訴しています。告訴の段階であり、罪が決まったわけではありません。6月22日には会社など5法人が倒産の手続きを申し立て、負債は約289億円とされています。10月1日には、大阪地裁が会社更生の申し立てを退け、破産の手続きに移る見通しだと報じられました。
何を見ればいいか
2024年の大量閉鎖とは別の話
A型の閉鎖は2024年にもありました。共同通信の自治体調査によると、2024年3月から7月にA型などの事業所329か所が閉鎖し、4,995人が解雇や退職になりました。原因とされたのは、2024年4月の報酬改定で生産活動が赤字の事業所の報酬が下がったことです。今回の大阪の件は赤字の話ではなく、報酬の上乗せを不正に請求したと市が認定した話です。どちらもA型のニュースですが、理由は違います。
就職の数より定着の中身
市が問題にしたのは、数えられた「就職」が、その中身から離れていたことでした。就職した人の数だけでは、本人に合った仕事に就けたのか、そこで働き続けられているのかは分かりません。
よくある疑問
A型の事業所全体が問題なのか
大阪市の一斉調査で要件に触れるおそれが見つかったのは、加算を届け出た271事業所のうち34事業所で、市長は可能性や疑いの段階だとしています。市内の1,649事業所のうち、この加算を届け出ていたのは271事業所です。今回の取り消しは、4事業所について市が認定した内容によるものです。
約150億円は確定した額なのか
行政が発表したのは、大阪市の分の約79億円と、加算金を合わせた返還請求額の約110億8千万円です。約150億円は、ほかの市町村の分を足した報道による数字です。
利用していた人はどこに相談できるか
大阪府内では、ハローワーク全16所に特別相談の窓口が置かれ、雇用保険の手続き、求人の紹介、担当者制の職業相談、面接会や職業訓練の案内が受けられます。ほかの福祉サービスへの移り方は、住んでいる市町村の障害福祉の窓口や相談支援事業所に相談できます。
支援の現場で使えること
A型の事業所を選ぶときや紹介するときは、就職した人の数だけでなく、どこに就職したのか、就職したあとにどのように定着を支えているのか、何人がどのくらい働き続けているのかを聞いてみてください。事業所が閉鎖されたときに利用者が使える相談先として、ハローワークの特別相談のような窓口が置かれることも、知っておくと役に立ちます。
企業の担当者へ
A型から就職した人を迎えるときは、事業所が定着をどう支えるのか、困ったときの連絡の取り方を最初に確かめておけます。就職後の支え手がはっきりしていれば、職場で困りごとが出たときに早めに相談できます。
今日のポイント
就職の数より、定着の中身を見ます。この件は裁判で争われており、手続きは続いています。
※大阪市が認定した内容について、会社は見解が異なるとして裁判で争っています(2026年10月31日現在)。この記事は、行政の発表、報道、会社の発表、国会での答弁を区別して書いています。社名や個人名は出していません。
提供 LAC(ラック)
LAC(ラック)は、映像制作を通じて「できること」を増やし、「働く力」を育てる、就労継続支援事業所向けの学習プログラムです。
学習管理システムで一人ひとりの進み具合を見える化し、専門のサポーターがチャットで質問に答えます。事業所に動画編集の専門家がいなくても始められます。
出典(確認日 2026年10月10日)
- 大阪市 報道発表 就労継続支援A型事業所の指定取消し等について(2026年3月27日) city.osaka.lg.jp
- 大阪市 就労継続支援A型事業所への調査結果(2026年2月12日公表)
- 厚生労働省 障害福祉サービス等報酬改定検討チーム資料(2026年2月18日) mhlw.go.jp
- 厚生労働省 今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会 資料(2025年6月25日) mhlw.go.jp
- 参議院 決算委員会(2026年6月1日)
- 報道(日本経済新聞・東京商工リサーチ・帝国データバンク・共同通信)
この記事の案内役 結城ユイは、制度と実務の解説の案内役(架空のキャラクター)です。監修:合同会社RP 代表 ミネストローネ