就労移行支援体制加算の「3年ルール」は、同じ利用者について過去3年間に加算の算定実績があれば、原則としてもう一度は数えられないという決まりです。2024年4月の報酬改定で入り、2026年4月の見直しで、ほかの事業所で算定された人も原則として数えられないことが明確になりました。同じ4月から、1年に数えられる人数には定員までの上限もついています。告示の文言、大阪市の発表、国会での答弁をもとに整理します。
※大阪市が認定した内容について、会社は見解が異なるとして裁判で争っています(2026年10月31日現在)。
2024年4月に入った3年ルール
この加算は、前年度にサービスを利用したあと一般就労し、6か月以上働き続けている人(就労定着者)の数に応じて、翌年度の報酬に上乗せされます。2024年度の報酬改定で、告示の就労定着者の定義に、過去3年間にその事業所で既に加算が算定された人は「都道府県知事又は市町村長が適当と認める者に限る」という条件が加わりました。原則として同じ人を3年以内に数え直すことはできず、例外は知事や市町村長が適当と認めた場合です。
なぜ同じ人を数え直せないのか
一度就職した人が離職して事業所に戻り、また就職すると、そのたびに就労定着者として数えられる余地がありました。厚生労働省の2026年2月18日の資料は、同じ利用者がA型事業所と一般企業の間で離転職を繰り返し、その都度加算を取る、本来の制度趣旨と異なる形で算定する事業者の報道があると書いています。
2026年4月の見直し 定員の上限と他事業所
報酬改定検討チームは、令和8年度の臨時応急的な見直しとしてこの加算の適正化を示し、2026年3月31日の告示で4月から次のように改めました。
- 1年に数えられる就労定着者の数は、前年度9月30日時点の事業所の定員数が上限
- 過去3年間に、その事業所だけでなく他の事業所で算定された人も、原則として数えられない
- 例外を認めるのは市町村長。資料は例として、ハラスメントなどやむを得ない事情で退職した人を挙げている
厚生労働省の別紙では、2026年6月以降、就労定着者の数が各サービスの最低定員数を超える請求には国保連のシステムで市町村に警告が出て、市町村が前年9月末の定員数と照らし合わせる流れが示されています。加算のあり方そのものは、2027年度の報酬改定に向けて改めて議論されます。
大阪市が認定した内容と一斉調査
大阪市は2026年3月27日、A型の4事業所の指定取消しを発表しました。市は、過去3年間に加算の対象とした利用者を重ねて対象にすることは、市町村長が適当と認める例外でない限り要件を満たさないとし、例外に当たらないのに就労定着者として届け出て過大に請求したことも不正にあたると認定しています。会社は、3年ルールの解釈と確認が十分ではなかったと発表しています。
市はこれに先立つ2月12日、市内の事業所への調査結果を公表しています。2024〜2025年度に加算を届け出た271事業所の書類を調べ、34事業所(12.5%)で、要件に触れるおそれのある同じ就労定着者の名前が確認されました。市は、この34事業所に聞き取りなどの確認と是正改善の指示を順に行うとしています。
国会での答弁
2026年6月1日の参議院決算委員会で、厚生労働大臣はこの事案を「極めて遺憾だと考えています」と答弁しました。そのうえで2024年度の3年ルールと2026年度の定員の上限を説明し、2027年度の改定に向けて、サービスの質の確保のために必要な対応を検討していきたいと述べています。
支援の現場で使えること
就職した人が離職して事業所に戻ってきたときは、過去3年間にその人で加算が算定されていないかを、自分の事業所と前に通っていた事業所の両方について確かめる段取りが要ります。やむを得ない事情での退職など例外に当たりそうな場合は、市町村に相談して判断を仰ぎます。離職の経緯を面談記録に残しておくと、その説明に使えます。
企業の担当者へ
福祉サービスから就職した人が離職すると、事業所に戻って再び就職を目指すことがあります。資料はやむを得ない事情の例にハラスメントを挙げています。退職の理由と経緯を本人と確かめて記録しておくと、その後の支援の判断材料になります。
今日のポイント
同じ人の就職を3年以内に数え直すことは、原則としてできません。2026年4月からは、他の事業所の分も確かめ、定員までの上限も守ります。
※大阪市が認定した内容について、会社は見解が異なるとして裁判で争っています(2026年10月31日現在)。
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出典(確認日 2026年10月10日)
- 厚生労働省 障害福祉サービス等報酬改定検討チーム 令和8年度障害福祉サービス等報酬改定における改定事項について(2026年2月18日) mhlw.go.jp
- 指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の一部を改正する告示(令和8年こども家庭庁・厚生労働省告示第5号 2026年3月31日) mhlw.go.jp
- 厚生労働省 就労移行支援体制加算の見直し(イメージ)別紙6 mhlw.go.jp
- 大阪市 報道発表 就労継続支援A型事業所の指定取消し等について(2026年3月27日) city.osaka.lg.jp
- 大阪市 報道発表 就労移行支援体制加算に関する調査結果(2026年2月12日) city.osaka.lg.jp
- 参議院 決算委員会 会議録(2026年6月1日) kokkai.ndl.go.jp
この記事の案内役 結城ユイは、制度と実務の解説の案内役(架空のキャラクター)です。監修:合同会社RP 代表 ミネストローネ