障害者雇用のニュースでは「過去最高」という言葉がよく出てきます。ただ、その数字が何をどう数えたものかを確かめると、見え方が変わります。この記事では、厚生労働省やJEED(高齢・障害・求職者雇用支援機構)の資料をもとに、働く人の数の読み方、会社が使う制度、働き始めを支える仕組み、働き続けることと辞めることの4つに分けて、いまの障害者雇用を整理します。
第1章 働く人の数の読み方
70万人は数え方の上の人数
厚生労働省の集計では、2025年6月1日時点で民間企業に雇われている障害のある人は70万4,610人でした。前の年より4.0%増え、22年続けて過去最高です。実雇用率は2.41%でした。
ただし、実際の人数は60万1,264人です。雇用率の計算では、重度の障害のある人は1人を2人と数え、週20時間以上30時間未満で働く人は原則として1人を0.5人と数えます。発表される70万人は、この数え方の上の人数です。
精神障害のある人が知的障害のある人を上回った
障害の種類別に見ると、2025年は精神障害のある人が16万8,542人で前の年より11.8%増え、知的障害のある人(16万2,153.5人)を数え方の上で上回りました。前の年は精神15万717人、知的15万7,795.5人で、知的障害のほうが多くありました。ハローワークで新しく仕事を探した精神障害のある人も、2015年度の8万579件から2025年度の16万5,316件へと、10年でおよそ2倍になっています。
厚生労働省の障害者雇用実態調査(令和5年度)では、企業で働く発達障害のある人は2018年度の3万9千人から2023年度の9万1千人に増えました。5年でおよそ2.3倍です。
達成企業は46.0% 未達成の半分以上は0人
法定雇用率を達成した企業は46.0%です。達成していない6万5,033社のうち57.3%は、障害のある人を1人も雇っていません。一方で、未達成企業の64.0%は、足りないのが0.5人か1人でした。
企業の規模別の実雇用率は、40〜100人で1.94%、100〜300人で2.18%、300〜500人で2.27%、500〜1,000人で2.41%、1,000人以上で2.69%です。法定雇用率を上回っているのは1,000人以上の企業だけでした。
公的機関にも差があります。法定雇用率は国や自治体が2.8%、教育委員会が2.7%です。国の機関は44機関すべてが達成し、実雇用率は3.04%でした。都道府県の教育委員会で達成したのは47のうち14で、教育委員会の実雇用率は2.31%です。
賃金は働く時間と合わせて見る
障害者雇用実態調査(2023年5月)の平均賃金は、身体障害のある人が23万5千円、知的障害13万7千円、精神障害14万9千円、発達障害13万円でした。週30時間以上働く人の割合も、身体75.1%、知的64.2%、精神56.2%、発達60.7%と違います。賃金を比べるときは、働く時間の違いも一緒に見る必要があります。
第2章 会社が使う制度
法定雇用率は2026年7月から2.7%
民間企業の法定雇用率は、2024年4月から2.5%(従業員40人以上の企業が対象)です。2026年7月からは2.7%になり、37.5人以上の企業が対象になります。
納付金と調整金
常用で働く人が100人を超える企業のうち、雇用率に足りない企業は、足りない1人につき月5万円の納付金を納めます。雇用率を超えて雇う企業には、超えた1人につき月2万9千円の調整金が支給されます。2024年度の実績分からは、支給の対象が年120人月を超える部分は月2万3千円に下がりました。たくさん雇うほど、1人あたりの額が減る仕組みです。
特例子会社
障害のある人の雇用に配慮してつくる子会社で、認定を受けると、子会社で働く障害のある人を親会社の雇用率に合わせて数えられます。2025年は631社で前の年より17社増え、働く障害のある人は数え方の上で5万3,710.5人でした。そのうち知的障害のある人が2万6,739.5人で、およそ半分を占めています。
週10時間から数える
2024年4月からは、週10時間以上20時間未満で働く重度の身体障害、重度の知的障害、精神障害のある人も、1人を0.5人として雇用率に数えます。2025年は1万8,227人で、前の年の1万3,995人から増えました。そのうち1万972人、およそ6割が精神障害のある人です。
除外率は段階的に縮小
障害のある人の就業が一般的に難しいとされた業種では、雇う人数を計算するときに一定の割合の労働者を除ける除外率という制度がありました。2002年の法改正で2004年4月に廃止され、いまは経過措置として率が残っています。率は2004年4月、2010年7月、2025年4月に10ポイントずつ下がり、2025年4月には建設業が20%から10%に、もとが5%や10%の業種は適用がなくなりました。
広がる雇用の代行サービス
企業が障害のある人を雇い、働く場所と仕事は別の事業者が用意するサービスが広がっています。厚生労働省の資料では、2023年3月末の23法人・125か所から、2025年11月末には46法人・223か所(うち農園153か所)になり、利用企業は延べ1,803社以上、働く障害のある人は1万1,241人以上でした。法律の規制はまだなく、2026年8月31日の障害者雇用分科会で、届出の義務やガイドライン、指導や勧告などが論点に挙がっています。
第3章 働き始めを支える仕組み
トライアル雇用
障害のある人を期間を決めて試しに雇う制度です。期間は原則3か月で、精神障害のある人は6〜12か月です。会社には月最大4万円、精神障害のある人なら最初の3か月は月最大8万円が支給されます。精神障害や発達障害のある人は、週10〜20時間の短い時間から始めることもできます。2017年度に始めた人は7,716人で、常用雇用に移った割合は86.5%でした。
ジョブコーチ
職場に出向き、本人と会社の両方を支える人です。支援は標準で2〜4か月(1〜8か月)。集中支援から移行支援、フォローアップへと進み、支援を上司や同僚に引き継いでいきます。JEEDの地域障害者職業センターのジョブコーチ支援は2024年度に2,638人で、職場定着率は89.9%でした。最も多いのは発達障害のある人で1,060人(定着率91.2%)、次いで精神障害のある人734人(85.6%)です。
つまずいている工程を細かく見る
厚生労働省の合理的配慮好事例集(2024年3月)には、宮城県のハンバーガーレストランの例があります。遅刻が続いていた人の作業工程を細かく見ると、ユニフォームに着替えるときにひもを結ぶことに時間がかかっていました。そこを工夫すると着替えの時間が大幅に短くなり、遅刻が改善しました。手洗いに時間がかかっていた人も、つまずいていたのは手洗いのあとに記入するチェック用紙をめくる作業でした。
テレワークと配慮の効果
JEEDの調査(テレワーク経験のある障害のある人470人)では、よかったことの1位が通勤の負担が減ること(74.7%)、次いで体調に合わせて働ける(33.2%)、周囲の目を気にせず作業できる(28.7%)、通院の時間を確保できる(26.6%)でした。必要な配慮の1位は、障害の特性に合わせたコミュニケーション(42.1%)です。
精神障害のある社員3,638人について職場の上司などに聞いたJEEDの調査(2025年3月)では、22項目の配慮のすべてで「有効」「やや有効」の割合が85%を超えました。最も高いのはマニュアル、職場での実習、相談する担当者を決めることで、どれも95%前後でした。
相談は1年で4割増
職場の障害者差別や合理的配慮についてのハローワークへの相談は、2025年度に631件で、前の年度より44.1%増えました。そのうち合理的配慮の相談は509件で、内容の最多は上司や同僚の障害への理解に関すること(27.3%)です。調停の申請は15件、始めた12件のうち4件で双方が受け入れました。勧告は0件でした。
第4章 働き続けることと辞めること
6か月後の定着率は75.2%
2024年4月から2025年3月にハローワークの紹介で就職した障害のある人が、6か月後も働き続けている割合は75.2%でした(雇用保険の記録で算出)。およそ4人に1人は、半年のうちに辞めています。
就労定着支援
一般就労して6か月たってから最長3年、月1回以上本人と会って支える福祉サービスです。厚生労働省の報酬改定検討チームの資料では、事業所は1,538、利用者は1万5,332人(2023年4月 国保連データ)。報酬は2024年度の改定で利用者数の区分がなくなり、就労定着率だけで7段階に分かれます。95%以上は月3,512単位、30%未満は月1,074単位で、およそ3.3倍の差があります。
休んだ社員の復職
働き始めてから精神障害のある状態になった社員がいる事業所のうち、62.4%が職場復帰に配慮していました。そうした社員の職場復帰で関係機関を使ったり協力を求めたりしたことがある事業所は、全体の5.8%でした。JEEDの職場復帰支援(リワーク)は2,457人が使い、復職率は86.5%でした。
就職の件数と解雇の数
2025年度にハローワークの紹介で障害のある人が就職した件数は11万5,178件で、そのうち2万7,590件、およそ4件に1件は就労継続支援A型事業所への就職でした。A型は、福祉サービスを使いながら事業所と雇用契約を結んで働く場所です。
ハローワークに届け出のあった障害者の解雇は、2023年度の2,407人から2024年度は9,312人に増えました。そのうち7,292人は、1か月に10人以上の解雇があったA型事業所の利用者で、その事業所の約9割は生産活動の収支が赤字でした。2025年度の解雇は3,692人に減っています。
支援の現場で使えること
数字を見るときは、実人数か数え方の上の人数か、いつ時点か、だれが対象かを確かめておくと、本人や家族への説明がぶれません。働き始めを支える制度では、トライアル雇用やジョブコーチを、本人と企業の両方に早めに紹介できます。就労定着支援を選ぶときは、事業所の定着率がどの段階かを聞いてみるのも一つの方法です。
企業の担当者へ
法定雇用率は2026年7月から2.7%になり、37.5人以上の企業が対象になります。未達成企業の多くは不足が0.5人か1人です。週10時間から数える仕組みや、トライアル雇用、ジョブコーチの支援を組み合わせると、短い時間から始めることもできます。配慮は、つまずいている工程を細かく見るところから始められます。マニュアル、職場での実習、相談する担当者を決めることは、調査で有効と答えた割合が特に高かった配慮です。
今日のポイント
障害者雇用の数字は、何をどう数えたかを確かめてから読みます。
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出典(確認日 2026年10月10日)
- 厚生労働省 令和7年 障害者雇用状況の集計結果(2025年12月19日) mhlw.go.jp
- 厚生労働省 令和7年度 障害者の職業紹介状況等(2026年6月19日) mhlw.go.jp
- 厚生労働省 令和5年度 障害者雇用実態調査 mhlw.go.jp
- 厚生労働省 雇用の分野における障害者の差別禁止・合理的配慮の提供義務に係る相談等実績(令和7年度) mhlw.go.jp
- 厚生労働省 障害者への合理的配慮好事例集(2024年3月) mhlw.go.jp
- 厚生労働省 労働政策審議会 障害者雇用分科会 第136回 参考資料3 いわゆる障害者雇用ビジネスに係る実態把握の取組について(2025年11月末時点 2025年12月22日) mhlw.go.jp(PDF)
- 厚生労働省 労働政策審議会 障害者雇用分科会 第141回 資料1(2026年8月31日) mhlw.go.jp(PDF)
- 厚生労働省 労働政策審議会 障害者雇用分科会 第139回 資料2-1 2025年度目標の評価について(2026年6月22日) mhlw.go.jp(PDF)
- 厚生労働省 障害福祉サービス等報酬改定検討チーム 第38回 資料4 就労定着支援に係る報酬・基準について(2023年10月11日 国保連2023年4月実績) mhlw.go.jp(PDF)
- 厚生労働省 障害者トライアルコース・障害者短時間トライアルコース mhlw.go.jp
- 厚生労働省 除外率制度について
- JEED 障害者雇用納付金制度の概要 jeed.go.jp
- 厚生労働省 独立行政法人評価 JEED 令和6年度業務実績評価書(案) mhlw.go.jp
- JEED 障害者職業総合センター 調査研究報告書171(2023年 テレワーク)
- JEED 障害者職業総合センター 精神障害者の雇用に関する配慮(2025年3月) nivr.jeed.go.jp
- 障害者の雇用と就業に関する研究会 参考資料(2025年6月25日 解雇者数)
この記事の案内役 結城ユイは、制度と実務の解説の案内役(架空のキャラクター)です。監修:合同会社RP 代表 ミネストローネ